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ファフナー 〜 真矢 〜
そして、それを翔子に告げようと思っていた。
もうすぐ、闘いが終わるのだと告げたくなっていた。
しかし、パイロットである自分は休養も立派な仕事である。
風邪など引くわけにもいかず、母たちに外出は禁じられてしまっていた。
「もうすぐだよ?もうすぐ、普通の日常が。」
真矢は懸命に走った。と、曲がり角で人影を見つけるまでは。
漆黒のような色だが、しかし蒼を連想させる優しさがある髪。男の子にしては、少し伸びているのではないか?と思う長さで。
それを風になびかせながら、少年がたたずんでいた。軽く羽織っただけの上着は、時折風に持って行かれそうになっている。
背丈は自分とそう、変わらない。
しかし、あの決意のある目は誰とも見間違うはずがなかった。
「一騎くん・・・・・。」真矢はその少年の名を呼んだ。
声が聞こえたのか、その人物は驚きを浮かべて真矢を見た
「遠・・・・見・・・?」
そこにいたのは真壁一騎だった。
真矢の幼馴染であり、明後日に決行される蒼穹作戦において共に戦う仲間であり、
そして・・・・
「一騎君も来てたんだね」
「ああ・・・・みんなに知らせたくて・・・その・・」
はっきりとは言わないが、真矢には一騎の思いがわかっていた。
自分もそのためにここへと来たのだから
「私もだよ」
-2-
ファフナー 〜 真矢 〜
[もう、だれも一人にはしない。私がみんなの思い出を守るの。]
 
遠見医院は既に、今日の業務を終え静まり返っていた。
時計は真夜中を告げる。
と、一人の少女が門を開け、姿を現した。
遠見医院の次女。遠見真矢である。
彼女は茶色に癖っけのある髪を風に揺らして、顔を上げた。
凛とした決意のある、それでいて幼い危うさが印象的だ。
端正な顔立ちだが、しかし影さす感があった。
真矢はまぶかにコートのフードをかぶった。
「もうすぐだよ?翔子。」
言うと、門を抜け、狭い歩道を走っていった。
夜中なのに、月はいつもと同じ様に辺りを照らしていた。
偽装鏡面というらしいが、どうでもいい。
歩くのには苦労はしないが、やはり時々石につまずいた。
「大丈夫。大丈夫。」そう何度も自分に言い聞かせる。
真矢の行き先には墓地があった。
羽佐間翔子の墓地があった。
なぜこのような時間に墓参りをするのか・・・。
明後日に迫る、決戦のためだった。
「蒼穹作戦」
いい名前だと、真矢は反芻する。
「あおぞら」の意味。澄んだ大きな母のような青空。包み込むような安らぎと強さがあると、真矢は思った。
-1-